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サマリタンズホームページより/17号

 

2017年11月28日発行

■貧困地域における自殺率は2倍

解題: サマリタンズは2017年3月、『不平等による自殺』 (Dying from Inequality)と題する全文28ページからなるレポートを発表した。以下は、このレポートの内容を紹介する記事である。なおレポートは、サマリタンズのホームページ(Home> About us> Our research> Dying from In-equality)からダウンロードすることができる。


 サマリタンズは、不平等と自殺リスクの関連についての報告書を発表しており、それに沿って、不安定雇用や劣悪な住環境、そして低所得など、社会経済的に困窮した地域の人々の自殺の危険性に注目し、支援のための資源を割当てるよう、政府、実業界、産業界、そしてそれぞれの部門の指導者に向けて呼びかけています。

 報告書「不平等による自殺」は、幅広い調査を行い、倒産やリストラに直面している会社や、肉体労働に従事している未熟練労働者、返済不能な債務者、劣悪な住環境にいる人々など、自殺危険度の高い共同体や個人の(多い)地域を明確にしています。

 前回の調査では、アイルランドにおいて、最も貧困な地域における自殺率は、貧困ではない地域の2倍であることを明らかにしました。

 アイルランド・サマリタンズの役員Deirdre Toner氏は次のように話しています。「自殺が不平等の問題であることは、以前から知られていましたが、今回の報告書は『それは正義ではない、公正ではない。変えなければならない』と明言しました。

  最も重要なことは、命を救うために何をしなければならないかを、この報告書が初めて明らかにしていることです。 不平等の問題に取り組むことは、援助や支援を最も必要とする場に立ちはだかる障害を取り除くことであり、第一に、援助や支援を必要とする事態そのものを減らすことになるでしょう。

政府、自治体、雇用主、支援事業者、共同体、家族そして友人の全ての者は、援助や支援が必要な時に、適切な支援がすぐに利用できるように備えておく役割をもっています」。

 「すべての人々は、人生の中で何度も打ちのめされるような心境になることがあります。自殺の危機に直面している多くの人々には、雇用者がいるでしょう。 あるいは、ハローワークで助けを求めているかもしれません。あるいは、家庭医のもとをたずねるかもしれません。彼らは、日常的に、国あるいは自治体の行政機関に接触しているかもしれません。

 ですから、私たちは、この報告書に沿って、広く社会の中の鍵となる人々や組織、例えば、住宅事業者、経営者、医療従事者、ハローワーク担当者たちに対し、 それぞれの業務や、組織、共同体を通して、メンタルヘルスを促進し自殺の悲劇を防ぐために可能な全ての行動を取ることを要請しています」。

 すでに、サマリタンズでは、人々を自殺に駆り立てる不平等の問題に取り組み始めています。遅れをとっている自治体と協力して、支援電話を無料にしたり、政府省庁や州機関の横断的な行動による、 自殺防止に向けた、政府の一体的な取り組みを呼びかけており、これは、報告書の調査結果に応えるものです。

 すなわち、次のステップは、確実に自殺者を減らするために、 協働的、組織的、効果的な方法でこの不平等の問題に取り組み、明確にされた地域に対して影響力のある事業所やボランティア組織のそれぞれの部所の中で、作業グループを活発化することです。

 役員のDeirdre Toners氏は続けます。

 「様々な自殺統計の数字は、人を表しているのです。仕事の無い契約社員も、誰かの親であり子どもです。家を失いかけている人は、兄弟姉妹、あるいは友人かもしれません。 もし、彼らが自ら命を断てば、それはまた、周りの人々を打ちのめし、さらなる損失をもたらす可能性があります。

 これは、私たち個人に向け、一層、配慮するよう呼びよびかけるものであるとともに、 個人とは違った力を持つ組織に向けた、同様の呼びかけでもあります」。

出典:Home>News>Suicide rates twice as high in deprived areas




■自殺報道のメディア・ガイドライン

解題:第16号掲載の「メディア・ガイドライン」第5版の後半です。報道で注意すべき点、使う言葉の選択、デジタル・メディアへの提言、そして自殺報道で考慮すべき10項目が述べられています。

考慮すべきその他の点


1、ニュース速報と即時出版
 様相がすばやく変化し国民の注目を集めている事件の速報の場合は、迅速な報道をせねばならぬという記者へのプレッシャーが増えます。このことは、間違ったあるいは適正でない報道の可能性を高めます。 報道する前に、自殺報道に関するあなたの組織内部のガイドラインあるいは実施規則と照らし合わせて下さい。もし、疑問がある場合はサマリタンズの報道局に確認して下さい。

2、有名人の自殺
 名士や有名人の自殺を何気なくロマンチックに記述することは、高い危険性があります。そのようなことを報道する場合は、一般的な報道の注意事項に特別な注意を払って下さい。

3、死因審問(Inquests)
 死因審問は、死の数ヶ月あるいは数年が経過した後に行われるかもしれません。死後審問は遺族にとって大変苦痛であり、そして慎重に報道しなければならないことを心しておいて下さい。

 死を取り囲む状況について検死官の報告は、自殺の方法などいつものように明確な詳細を含んでいます。しかしながらこのことは、どの詳細も自動的に報道されるべきであることを意味しません。精神的に影響を受けやすい人を守るため、明確なあるいは細かすぎる報道には配慮が必要です。

 同様に、その他の人により提供される事件に関する明確な詳細、例えば、警察や医療補助者によるものは、同様な注意を払って扱われるべきです。(samaritans.org/mediaguidelinesで入手できる概要報告書「自殺の後遺症を持つ遺族とともに」を参考して下さい。)

4、統計
 もし、記事にデータの「傾向」を用いる場合は、統計データの急な変化は一年ごとに生じることがあるので注意して下さい。このことは小さな地域の自殺数に焦点を当てた場合は特にそう言えます。傾向を調べるには3年以上の時間枠で、例えば特定の層(group)の自殺率の増加、のように見ることが最善です。

 英国とアイルランドにおける自殺の最新の統計とさらなる記録は以下で。
 www.samaritans.org/suicidefigures

5、無理心中
 無理心中はまれな現象ですが、メディアの飛び抜けた注目を集めます。無理心中は、人が自殺する前にその人の家族を殺すこと、あるいは学校のような公共の場所で個人が自殺する前に複数の人を殺すことで起きます。

これらの死を取り囲む環境はドラマチックで心をかき乱すので、報道は一般的なメディアガイドラインを固守すべきです。「後追い」行為が無理心中の場合も起るので、特別な注意が必要とされます。

(さらなる情報は、samaritans.org/mediaguidelines で入手できる概要報告書「無理心中」を参照して下さい。)

6、語句
 自殺報道で用いられる語句や言回しは重要です。不適当なあるいは軽率な語句の使用は、亡くなった人の汚名を持続させ、死をセンセーショナルに表現してしまいます。

 一方、慎重に語句を使うことは、報道を適正にし、残された家族や友人の苦悩を最小限にします。

使ってよい表現
・自殺(A suicide)
・いのちを絶つ(Take one's own life)
・自殺のおそれのある人(Person at risk of suicide)
・自殺により亡くなる/自殺による死亡(Die by/death by suicide)
・自殺未遂(Suicide attempt)
・既遂自殺(A completed suicide)

 死を、誰かが「自殺を犯した」のように表現しないで下さい。自殺の報道で「犯す」という言葉は、自殺はもはや違法(訳者注:1961年に改定)でないので現実に間違っています。

使ってはいけない表現
・自殺を犯す(Commit suicide)
・泣いて助けを求める(Cry for help)
・「成功した」あるいは「成功しなかった」自殺行為
 (A 'successful' or 'unsuccessful' suicide attempt)
・自殺の犠牲者(Suicide victim)
・自殺の「流行」「熱狂」「ホットスポット」
  (Suicide 'epidemic' 'craze' or 'hot spot')
・自殺傾向(Suicide-prone)
・自殺名所めぐり(Suicide 'tourist')

デジタル・メディアへの助言

1、情報源
 自殺の記事にオンライン情報を使う場合は、さらなる注意を払って下さい。死あるいは死に至る人を取り巻く環境についての推測は、おそらく誤って報道され事実として間違った報道がくり返されます。

オンライン情報は瞬時にかつウイルスのように伝わるので、その信頼性と信用性についてはダブルチェックがより一層重要です。

2、チャットルーム
 チャットルーム、自殺志向のウェッブサイト、および他のオンライン・フォーラムの内容を使用する場合は注意し、これらのサイトを特定することは避けて下さい。

そうすることは精神的に影響受けやすい人に害を与え、彼らがこれらの情報源に向かうように仕向け、そして遺された家族を苦しめます。

3、フォーラム
 もしあなたのインターネットサイトが、読者あるいはユーザーからコメントスレッドや彼らからの提案という形で、フィードバックを求めているならば、何がふさわしくない事柄であるかを含め、用語が明確であることを確認するようにして下さい。

私たちは、精神的に影響を受けやすい人を感化する情報の提供を警戒するため、方法の議論を含め、事前にモニタリングすることとコメントの言葉を慎むことを推奨します。

4、参照先
 ウェッブサイトやソーシャルネットワーキングサイト(SNS)が、ある人々により自殺で亡くなった人を称えたり追悼したりするのに使われるかもしれません。

そのようなサイトに言及するとき、特にそれが若者を対象としている場合は、そのことが死を美化するかもしれないので、注意して下さい。

5、画像とビデオ
 記事の説明でソーシャルネットワーキングサイトの画像を使う場合は、遺族と友人に与える強い影響を事前に考慮して下さい。死亡した人の、あるいはその人についてのオンラインビデオにリンクする場合も同じようにして下さい。

6、用語
 記事を書くのにソーシャルネットワーキンツールを使用する場合は、同様の注意をして下さい。例えば、見出しを書く場合、言葉が適正であるかどうかチェックして下さい。

7、サポート
可能であればいつでも、サマリタンズのようなサポート組織へのリンクを加えて下さい。

(さらなる情報については; www.samaritans.org/mediaguidelinesの概要報告書‘Digital Media’を参照して下さい)。

自殺報道―より広範囲な背景
調査研究と根拠

 過去20〜30年に渡り、自殺のマスコミ報道といかにそれが行動に影響を与えるかについて、重要な調査研究がなされてきました。調査研究は、メディアが自殺の報道を注意深く行うことが、自殺者が潜在的に減るという良い成果に繋がることを示しています。

 この学問的な調査研究はテレビや新聞を含んだ「主要」メディアで行われて来ました。しかし、研究者の間で自殺行動におけるデジタルメディアの影響の可能性を調査する関心が高まっています。

マスコミ報道と自殺行動
 2008年の自殺のマスコミ報道「自殺予防―報道のプロのための知識」における世界保健機構(WHO)の出版物は、マスコミ報道と後追い行動の多方面にわたる関係を立証し、次のように言明しています。

 「精神的に影響を受けやすい人は、自殺の報道により後追い行動に走る可能性があります。特に、その報道が大々的で、目立ち、情を煽り、そして/又は、自殺の手段を明確に表現している場合はそうなります。」

 自殺とメディアについて97の研究課題で構成されたJane Perkins達の研究論文への包括的な全世界の見解は、2010年に次のように結論づけています。

 「ニュースや情報メディアにおける無責任な自殺報道は、後追い行動を引き起こす。」
Perkisその他は、次のようにも強調しています。
 「最新(訳者註:2010年)の見解の結論は、メディアの検閲による要求と解釈されるべきでなく、メディアには自殺を公衆衛生の問題として捉えるという認識を高める役目があると理解されるべきです。

 さらに言えば、見解は自殺のメディア報道は責任を持って行われるべきという暗示と解釈されるべきです。そして、根拠によって確認された潜在的な苦痛を減らすために、人の『知る権利』とのバランスをとるべきです。」

自殺関連の重要な事象
 「後追い」自殺は、「社会的伝染」と「集団」自殺の概念であるという事象に、ある場所を自殺の「ホットスポット」と呼ぶことも関連づけられます。メデイアはこれら全てに寄与する役目を果たすことが出来ます。

 これらの言葉を以下に説明します。

 「後追い」自殺は、他人の自殺行動(既遂または未遂)のまねと定義されます。自殺しようとする人は、人から/地域の情報あるいは記述から/テレビや他のメディアの報道から、その行動について知ります。

 「社会的伝染」は、自殺行動(既遂または未遂)が次の自殺行動を誘発する「見本」や事例になる事象を言います。この「見本」は有名人や名士だけでなく、地域の住んでいる身内、友人あるいは近隣の人かもしれません。

この伝染作用は、死んだ人への悲しみの広がりや過度の共感、あるいは彼らが命を絶った環境により引き起こされます。

 「集団」自殺は集団での自殺あるいは未遂、あるいはその両方で、特定の集団で通常予期されよりも、時間や場所を一緒にして起こります。

 「ホットスポット」は話し言葉で、自殺に関し二つの意味のいずれかを持ちます。

 第一は、例えば特定の町など、人口に対する自殺率が比較的高い特定の地理的地域を言います。第二は、人がいのちを絶つ場所にしばしば使う橋など、特定の場所(通常公共)を指します。

 自殺発生の結果として名を馳せた場所は―特にメディアで広く報道された場所は―自殺の名所として人々を引きつけるでしょう。

自殺報道で考慮すべき10項目

1、使われた紐のタイプあるいは錠剤の種類や量の記述など、自殺の方法について詳細を書かない。その方法が手早く、簡単に、苦痛がなくあるいは確実に死ねると暗示してはならない。

2、表記の仕方。ドラマチックな見出しや「はやりの自殺」あるいは「ホットスポット(自殺名所)」のような語句は避ける。

3、自殺志向の人が助けを求めることができる支援団体とその場所を記載すること――これは大変役立ちます。

4、ソーシャルメディアとは特別な注意を払って接触すること。自殺を奨励あるいは美化するウェッブサイトやネットワークについて言及しないこと。

5、ドラマチックあるいは扇情的な写真やビデオは避ける。遺書の内容を含めることはしない。

6、若者は特に悲観的な自殺の報道に影響を受けやすい。自殺した若者の写真を不当に目立つようにしてはならないし、ギャラリーのように反復使用しない。

7、記事を不当に目立つようにしない。例えば、派手な記事にはしない。

8、自殺の複雑な現実と遺族への強い影響を軽く扱わない。自殺により遺された人々は精神的に弱く、普通の人よりも自殺に走りやすいことを覚えていて下さい。

9、自殺の誘因の憶測は、たとえ近親者が語ったものであっても、避けるべきです。

10、統計数字を慎重に扱うこと。最新のデータを手にしているかどうか、同種のものを比較しているかどうか、サマリタンズあるいは国の統計当局に問い合わせて下さい。

メディアと自殺―実施規制

 自殺を含む、取り扱いに慎重を要することや複雑な問題を報道する時は、規制が法令化されていてもあるいは自己規制で行われていても、業界全体の実施規制に注意を払わねばなりません。私達ウェッブサイトsamaritans.org/mediaguidelinesで実施規制を入手できます。

出展: Home> Media centre> Media Guidelines for the reporting of suicide






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